この日は、まず、最初の訪問先であるルイ・ジャドーを訪問した。通訳のHrさんとボーヌの駅で待ち合わせ、10時にルイ・ジャドーに到着した。
ルイ・ジャドー社の歴史は古くは、1858年にルイ・ジャドー氏によって設立されたネゴシアン・エルヴールであるととも、総面積 105haを有するドメーヌでもある。
ラ・サブリエールと呼ばれる醸造所の内部は、幾何学的な美しさを持っている。
部屋の一番外周には、赤ワイン用のステンレス製の醗酵槽が、その内周に赤ワインの木製の開放桶が整然と並べられ、そして、部屋の中心には、高さ2メートル程の台があり、その台を囲んで木製の発酵層が丸く集められている。
階段を登り、台の上から醗酵槽を覗き込むと、その内部は、赤ワイン色素で赤く染まっていた。そして、この台の上から天井を見上げると、天井の中心からステンレス製の細パイプが伸びて来ている。
この部屋のどこを見てもピカピカに磨かれており、天井からの照明が、ステンレスタンクと 木製の醗酵槽を美しく照らし出す。
整然と並べられた設備を見ていると、ステンレスタンクが現代的なテクノロジーを表現し、木製の醗酵槽がぬくもりのある自然を表現しているかのように見えてくる。
効率主義的な機能美と自然主義的な美が織り成すこの部屋を見ていると、ルイ・ジャドーが持つ、美的意識が伝わってくるように思えてくる・・・。

醗酵に関して要約すると、次のようなもの説明であった。
葡萄の収穫は、すべて手摘みで行われ、完熟した健全なものだけを選別される。
赤ワイン用のピノ・ノワールは90パーセント除梗し、破砕せずにステンレス製のチューブで木製の開放桶、または、ステンレスタンクへと送られる。酵母は、天然酵母のみ使用。ほぼ30日間の醸しアルコール発酵を行い、その後、ワインはオークの小樽(228
リットル)に移され、マロラクティック発酵を行う。
圧搾に関しては、極力種をつぶさないようにしている。葡萄の種に含まれるタンニンは雑味となり、熟成には適さないという。オーク樽による熟成はアペラシオンにより10〜20カ月。瓶詰め時、清澄は、一切行わず、ろ過も必要最小限にとどめる。
また、白ワインは、収穫したシャルドネを全房のまま圧搾機で搾汁し、果汁はステンレスタンクで数日間漬け込みが行われる。不純物を沈殿させ、発酵が始まったらすみやかにオークの小樽に移す。この小樽にてアルコール発酵とマロラクティック発酵が行われる。同じ樽の中でアペラシオンに応じて10〜20カ月間寝かされ、瓶詰め前に軽い清澄作業が行われる。
これらの説明の中で、一番驚いたのは、新樽の使用比率が、グラン・クリュでは、50%と説明されたことであった。これには、ビックリした。
一般的には、プルミエ・クリュよりもグラン・クリュの方が新樽比率が高い。しかし、ルイ・ジャドーでは、逆であった。プルミエ・クリュ・クラスでは、樽の要素でワインの風味を支える必要があるが、グラン・クリュでは、葡萄の持つポテンシャルを最大限引き出すために、新樽の比率を下げるとこのと。そのコンセプトは、ワインのテロワールを大切にするということであった。
ネゴシアンであるドミニク・ローランが、ワインの熟成で樽の風味をワインになるべく抽出させないように新樽を2回 使用すること(「新樽200%」と表現していた)が話題になったときがある。これも一つの時代の流れなのであろうか?
80年代には、「テロワールを大切にする」と主張されたとしても、このように新樽の比率を50%に落としたり(あるいは200%に上げたり)することは、無かったように思う。
次に、セラーに案内されて、樽からの試飲に移った。(1999年は、すべて樽からの試飲)
・1999コート・ド・ニュイ・ヴィラージュ
Cote de Nuits Villages
・1999サントネイ・クロ・ド・モルテ
Santenay Clos de Molte
・1999ムルソー
Meurseault
・1999ピュリニーモンラッシェ・プルミエクリュ・クロ・ド・ガレンヌ
Puligny Montrachet 1er Cru Clos de Garenne
・1999バタール・モンラッシェ
Batard Montrachet
・1994ピュリニーモンラッシェ・ヴィラージュ
Puligny Montrachet Villages
(これは瓶をあけてくれました。)
・1999フィクサン・ルージュ
Fixin Rouge
・1999ペルナン・ベルジュレス・クロワ・ド・ピエール
Pernand Vergeresses Cloix de Pierre
・1999シャンボール・ミュジニー・シャルム
Chambolle Musigny Charmes
・1999エシェゾー
Echezeaux
・1994シャンボール・ミュジニー
Chambolle Musigny
(これも瓶からの試飲です。)
ルイ・ジャドーのワインをこれほど、連続で試飲したことはなかったが、なるほど、それぞれの畑の個性が出ていたように思う。
ある有名なネゴシアンのワインを以前、同じ年号で畑違いにして水平試飲を行ったことがある。その時は、ネゴシアンの個性が前面にでていて、どの畑を試飲しても同じような風味で、畑の個性が殺されていると感じたことがあった・・。
その時は、それほど畑の個性を表現するということは難しいことなのか、と考えたことがあった。
しかし今回、ルイ・ジャドーでのテスティングでは、ストレートに畑の個性が表現されていた。ルイ・ジャドーに対する高い評価は、これらのことから来ているのだと思う。
それにしても、セラーで試飲したワインは、美味しかった。日本で飲んだときの印象とは、随分違う。ワインの果実味が生きている、ワイン本来がもつ生命力がストレートに伝わってくる。なぜなのか?
日本に帰国したら、ジャドーのワインを飲んでみたくなった。はたして日本でも同じ風味が味わいえるかどうか。・・・・。
さて、ルイ・ジャドーの訪問でもっとも注目したいのが、1997年に完成した最新の醸造設備。これは La Sabliere(ラ・サブリエール)と呼ばれ、ブルゴーニュでは、最新鋭の設備が整っている。
まず最初に、入り口から小部屋に案内された。そこにはブルゴーニュの畑の立体的な模型があり,、ジャドー社の自社畑、ドメーヌ所有の畑、ネゴシアンとして買い付けている畑が、一目でわかるように色分けされていた。
ジャドー社の扱うワインは、北はシャブリから南はボジョレーまで約 150にものぼるという。
そこで畑の説明を受けた後、次の部屋に案内された。分厚い扉が開くと、そこがラ・サブリエールと呼ばれる例の醸造所となっていた。
この細いパイプの先端は、円を描くようにその周囲に並んでいる醗酵槽の上をレールづたいに移動できる仕組みになっていて、収穫した葡萄を各醗酵槽に送る役割をしている。
また、一番外周のステンレスタンクは、一日に2回pigeage (ピジャージュ=赤ワインの醗酵中に醗酵桶の上部に浮いてくる果皮を櫂棒で上からかき混ぜる)が自動的に行われる。
赤ワイン用の醗酵槽の反対側には、白ワイン用のステンレス製のタンクとオーク樽が、今年の収穫を待つかのように並べられていた。